世界のお寺
2500年前にインドで生まれた仏教は、数百年かけて東南アジア、中国、そして、日本へと伝わりました。仏教はそれぞれの土地の社会状況や文化事情の違いによって大きな変化を遂げ、今日まで様々な「仏教」が生まれ、発展してきています。
アジア各地にある寺院を訪れると、その土地で信仰されているそれぞれの「仏教」の違いに驚かされます。
ブッダガヤの大菩提寺(インド)
ブッダガヤの大菩提寺
仏教の始祖である釈迦が悟りを開いたとされる場所に建つのが「ブッダガヤの大菩提寺(マハーボーディー寺)」です。現在の建物は5~6世紀に創建され、19世紀にミャンマーの仏教徒によって改修されたものです。寺院内には本堂である高さ52mの大塔と、釈迦が成道したときに座っていた金剛宝座、ゴータマ・ブッダの菩提樹、沐浴の蓮池があります。
大菩提寺の周りには各国各宗派の寺院が建ち、世界中から参拝者が訪れます。
仏教が生まれた地であるインドですが、その後、13世紀にイスラム教徒が侵攻したことやヒンドゥー教の影響力が強まったことにより衰退していきました。しかし、近代に入ってスリランカからの仏教再移入や、被抑圧カーストの集団改宗によって、仏教徒の数は少しずつ増加しつつあります。2001年の国勢調査によるとインドの仏教徒は約800万人(人口比0.8%)と言われます。
ラダックのゴンパ(インド)
ラダック ティクセゴンパ
ラダック ヘミスゴンパ
インド北西部にあるラダック地方で仏教が栄えたのは、9世紀のチベットにおきた内乱のため多くの高僧がこの地へと逃れてきたことが始まりであるそうです。ラダックではチベット仏教の「紅帽派」と呼ばれるカーギュ派と「黄帽派」と呼ばれるゲールク派が共に栄えました。
ラダックの寺院は日本の仏教寺院とは違って、ゴンパと呼ばれる僧院の形態となっています。ゴンパには瞑想のための区画と居住部分の僧坊があり、その多くが町や村から離れた丘の上にあります。
ワット・シェントーン(ラオス)
ラオスの寺院
ラオスは国民の約6割が上座部仏教を信仰しており、国民の生活は仏教と密接な関係があります。男子は生涯に一度は出家し仏門に入るのが通例です。昔は雨季の3ヶ月を寺院で過ごしていましたが、今日ではほとんどの男性が期間を1~2週間に短縮しているそうです。
ワット・シェントーンは1560年に建てられた王家の菩提寺です。この寺院のあるルアンパバーンは、ラオス仏教の中心地として80以上の寺院が点在しています。
ブータンの寺院(ブータン)
ブータンの寺院
ブータンの仏教はチベット仏教です。ドゥク派を国教としていますが、ニンマ派も信仰されています。信仰の対象は釈迦如来ですが、釈迦の転生活仏でありニンマ派の開祖であるグル・リンポチェも釈迦如来同様に信仰されています。寺院内にはグル・リンポチェを描いた壁画や曼荼羅が見られます。
ワット・アルン(タイ)
ワット・アルン
タイは国民の約95%が上座部仏教を信仰しています。タイにおいては、仏教徒の男子はすべて出家するのが社会的に望ましいとされており、出家行為が社会的に奨励される傾向にあります。庶民の仏教観念としては「タムブン」というものがあります。これは輪廻転生の思想が影響した観念で、寺院や僧に寄付することで来世によりよい身分に生まれ変わろうとするものです。バンコクにあるワット・アルンは、トンブリー王朝(1767年~1782年)の王宮寺院であったお寺で、三島由紀夫の「暁の寺」の由来になった寺院でもあります。
仏国寺(韓国)
仏国寺
韓国では国民のおよそ1/3に当たる1500万人ほどの仏教徒がおり、その中で曹渓宗が90%以上を占めています。曹渓宗とは、釈迦牟尼仏の教えを根本とし、「直指人心」と「見性成仏」と「伝法度生」の3つを宗旨としています。経典は「金剛経」と「伝灯法語」。
仏国寺は慶尚北道慶州市の郊外にある仏教寺院です。751年、新羅の景徳王の時代に建立された寺院です。当時の新羅は護国仏教としての性格が強く、唐の侵攻に対し徹底抗戦を促して、新羅の朝鮮半島統一に大きな影響を与えました。
龍山寺(台湾)
龍山寺
台湾で仏教を信仰している人は、全人口の約23%と言われています。台湾には道教や仏教の要素を含んでいる民間信仰も重複して信仰している人も多く、特に道教は仏教と密接な関係を持っています。そのため、広い意味で台湾では道教と混合した仏教の信仰者は80%に達すると言われています。
龍山寺は台北市を代表する寺院で、中国福建省から渡ってきた人々によって1733年に創建されました。本尊に祀られているのは観世音菩薩。また、その他にも三国志の関帝(関羽)や媽祖など道教の神様も祀られています。