お墓の基本構成、建墓にかかる費用と手順 - お墓に関する「よくある質問」
お墓の基本構成
お墓は、お墓の中心となる墓石と、お墓を囲む外柵、それに遺骨を納めるカロート(納骨室)の3つを基本に構成されています。その他、花立て、水鉢、香炉・香立て、拝石、塔婆立て、境界石などは仏式のお墓では最低限必要なものとされています。
墓石
一般的な和型の墓石は、土台となる「芝石」、「中台」、名字を刻む「上台」、戒名を刻む「竿石」によって構成されます。墓石によっては芝石を省いたり、竿石と上台の間に蓮華を簡略化した形の「スリン」という石を用いたりします。
付属品としては、墓前に敷かれてカロートの蓋石にもなる「拝石」、生花を立てる「花立て」、お線香を立てる「香炉」、お水を入れる「水鉢」があります。花立ては現在ではステンレス製が普及しています。香炉はお線香を立ててお供えする「立置型」と、寝かせてお供えする「くりぬき型」があります。水鉢は台石をそのまま切り出す場合と別で作る場合があります。
カロート(納骨室)
ご先祖様や亡くなった方の遺骨が納められるお墓の心臓部ともいえる場所、それが「カロート(納骨室)」です。カロートは通常、墓石の下に位置しています。材質としては石やコンクリートが使われ、大きさや形は遺骨の埋蔵の仕方によって変わります。カロートの底は遺骨を土に還すことを目的とする場合は土のままに、骨壷のまま納骨する場合は石にします。
外柵
境界石・巻石・境石などとも呼ばれ、墓所との境をはっきりさせ、流水や地崩れなどを防止するものです。延石や門柱をつけたものもあります。
墓誌
故人の戒名や生年月日、没年、生前の経歴などを刻むものです。
灯篭
灯篭には邪気を払うという意味合いがあり、お墓の入り口や墓石の横に左右一対、あるいは一基のみ設置されます。
玉砂利
墓地内の石のない部分に敷き詰めるもので、化粧砂利とも呼ばれます。黒インド、大磯、那智、五色といった種類があり、墓石との色の調和を考えて選ぶのがポイントです。
経机(供台)
墓前に据えられる、お供え物を置く石台です。
つくばい
いわゆる手水鉢で、本来はお墓参りの前に手を洗い清めるものでしたが、最近は装飾品として置かれることが多いようです。
物置台
お参りの際に手荷物などを置くのに用います。
名刺受け
参拝者の名刺を受けるためのものです。
塔婆立て
浄土真宗以外の仏教では、供養のために塔婆を立てるしきたりがあります。墓石の背面か、外柵に組み込まれた形で設置されます。
お地蔵様
生後まもなくこの世を去った子供の供養のために建立されるものです。線彫り、半身彫り、全身彫りの3種類があります。
お墓を建てる費用
お墓にかかる費用は大きく分けて、墓地代(永代使用料)、墓石代、管理費の3つで構成されます。寺院墓地ではその立地や伝統・格式によって永代使用料や管理費が異なります。
永代使用料
お墓を建てる場所を確保するためにかかる費用が、永代使用料です。墓地は売買できないため、土地を使用するために墓地の経営主体から永代使用権を取得する契約を結ぶ必要があります。永代使用権は、子孫が永続する限り使用できる借地のようなものですが、転貸や転売、親戚や知人への譲渡などはできません。また、墓地が不要となった場合は更地に戻して返還する形になります。
寺院墓地の多くは永代使用権となりますが、霊園の中には10~20年で契約更新するところもあります。
墓石代
墓石代には、墓石そのものの費用である石材費と、墓石の基礎工事・石材加工・外柵の設置工事などにかかる墓石工事費が含まれます。
石材費は石の種類、大きさ、デザインによって変動します。墓石工事費も区画面積や付属品(花立て・香炉・塔婆立て・墓誌など)によって変わります。
管理費
管理費とは、墓地・霊園の維持管理に必要な経費の一部を墓地使用者が負担する費用のことです。一般的に管理費は永代使用権を取得した時点から発生するため、納骨や墓石の設置が済んでいなかったとしても支払う義務があります。
寺院墓地の場合も管理費は必要になりますが、寺院によって「護寺会費」「つけとどけ」など名目はさまざまです。また、檀家となる場合には別途、お布施が必要となる場合もあります。
お墓を建てる手順
お墓を建てるには、まず墓地(お墓を建てる場所)と石材店(墓石の施工業者)を選ぶ必要があります。墓地や石材店選びで失敗しないためには、お墓を建てる手順やポイントを事前に知っておくことが大切です。以下では、お墓を建てるまでの一般的な手順をご紹介します。
【1】墓地・石材店を選ぶ
お墓を建てる手順として、まず墓地を先に決める場合と石材店を先に決める場合とがあります。
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墓地を先に決める場合
宗旨・宗派、本家と分家の問題、個人墓か合祀墓かなどを検討したうえで墓地を決めます。墓地選びの際には実際に墓地を見学することをおすすめします。墓地へのアクセス、区画の広さや施設・設備の充実度、管理状況などを確認して、希望する条件に合うかどうかをチェックするとよいでしょう。また、墓地によっては石材店を指定され自由に選ぶことができない場合もあるので注意が必要です。
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石材店を先に決める場合
石材店の中には、独自に墓地を運営しているところや、墓地の販売業務を委託されているところが少なくないため、石材店から墓地を紹介してもらうことも可能です。信頼できる石材店を選ぶポイントとしては、石材知識の詳しさや見積書・契約書の明確さ、アフターサービスの充実度、店舗や展示場の品揃え、地域での評判の良さなどがあります。可能であれば、実際に石材店が手掛けたお墓の見学をすることで、きちんとした仕事がなされているかを確認することができます。
【2】お墓の選択
お墓を購入する際、石材の種類と墓石のデザインを決めます。実際に墓地・霊園を見学して、建立されているお墓を参考にするとよいでしょう。
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石材の種類
お墓に使う石材は硬質で風化しにくく磨くと光沢がでる石を選ぶことが大切です。花崗岩、安山岩、閃緑岩(せんりょくがん)、斑れい岩などが良質の石材として知られています。安山岩以外は一般に「御影石」と呼ばれ、斑れい岩質の「黒御影」、花崗岩質の「白御影」、最高級品といわれる「青御影」などが代表的なものになります。
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お墓のデザイン
お墓のデザインとしては、江戸時代から広く使われている「和型」、見た目がモダンでお墓としての格調も高い「洋型」、個性を重視したモニュメント形式の「ニューデザイン墓石」があります。墓石の形や大きさには決まりがなく、原則的に自由に形を決めることができますが、墓地によってはある程度の規制をしている場合があるので予め確認しておきましょう。
【3】墓石の文字の決定
墓石には家名を刻むことが多いですが、お寺や霊園によってある程度の決まりごとがある場合と、まったく自由な場合があります。宗派に応じた「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」といった言葉や、洋型墓地などでは自分の好きな言葉や詩などを彫刻する場合もあります。文字の書体は、楷書・行書・草書・隷書・ゴシックなどから選択します。墓石の側面には故人の戒名や死亡年月日などを刻みますが、最近では墓石とは別に墓誌を建立することも多いようです。
【4】墓石の注文・契約
墓石を注文する前に決めておくことは、墓石の予算・支払い方法、墓石の材質・デザイン、墓石の文字・書体、墓石の付属品(外柵・花立・灯篭など)、完成予定日(納骨日)などです。その際、故人の戒名・俗名・没年月日、家紋、施主・建造月日、印鑑、墓地の略図などを用意しておくとスムーズに建墓工事を進められます。完成予想図や墓石に損傷があった場合のアフターサービスについても確認しておくとよいでしょう。
【5】墓石の据え付け・開眼法要・納骨法要
墓石の据え付けが終わったら、遺骨をお墓に埋葬・納骨する前に「開眼法要」と「納骨法要」を行う必要があります。開眼法要は僧侶にお経を読んでもらい墓石に魂を入れる儀式で、納骨法要は故人の遺骨を埋葬する儀式です。開眼法要と納骨法要は同時に行うことが多いです。開眼法要にかかる費用としては、供物・お花・お香、僧侶へのお布施、法要後のお礼の宴席代などがあります。
納骨を行う際には、事前に埋葬許可証を墓地の管理者に提出する必要があります。
墓石以外のお墓
永代供養墓
永代供養墓とは、お墓の継承者がいなくても寺院や霊園が永代に渡って供養・管理をしてくれるお墓のことで、通常は生前の申し込みも可能です。
核家族化や非婚化が進む現在、後継者の不在や「家」というものが失われることで、個人によるお墓の所有は困難になってきています。そんな中で永代供養墓の需要は年々高まっています。
永代供養墓は多くの場合、墓石代がかからず、墓地使用料が一般のお墓に比べ割安となっており、最初に費用を払えば管理費やお布施、寄付金などが一切かかりません。また、一般の寺院墓地と違い、基本的に宗旨・宗派を問わず、お寺の檀家になる必要がないことも多いです。
永代供養墓の形式、納骨方法はお寺によってさまざまです。予算・立地・納骨方法などからご自身が希望する形式のお墓を選ぶのがよいでしょう。合祀する形式の場合は、後々改葬して新しいお墓に遺骨を移すといったことができなくなるため、選ぶ際には注意が必要です。
永代供養墓の費用は、「永代使用料(墓地使用料)」「永代供養料(永代に渡って供養してもらう費用)」「刻字料(墓誌に名前などを彫刻する費用)」「納骨料(納骨手数料)」などをまとめた一式料金である場合が多いですが、内訳はお寺によってまちまちで、これらの費用以外に入檀料や年会費が必要になる場合もあります。金額帯としては供養の期間や納骨方法などによって上下しますが、一般のお墓よりも安価である場合がほとんどです。
納骨堂
納骨堂とは、その名の通り遺骨を収蔵する施設のことです。かつては、お墓を建てるまで一時的に遺骨を納める意味合いが強かったようですが、現在は永代にわたる供養を前提とした墓所としての需要も高まっています。
以下では、納骨堂の代表的な形式をいくつかご紹介します。
- ロッカー式
ロッカーのような納骨棚に骨壺を納めます。遺骨を出してお参りできる場合と、お参り用のご本尊がある場合があります。一般的には、他の形式の納骨堂より安価と言えます。
- 仏壇式
上部が仏壇のような作りで、下部に納骨する形式の納骨堂です。骨壺だけでなく、遺影や思い出の品などを飾れるところもあります。
- 屋内墓式
一般的な屋外の墓所をそのまま室内に持ってきたような形式です。天候を気にせずお参りができますが、水や線香を供えるには制限があるところも多いようです。
- 自動搬送式
参拝スペースや礼拝室で専用のカードをかざしたりIDを打ち込むと、自動で遺骨が搬送されてきてお参りができます。遺影や供物は供えられませんが、周りを気にせず静かにお参りができます。
お墓の移転・改葬方法
墓地に埋葬されている遺骨を他の墓地や納骨堂に移すことを「改葬」といいます。お墓を守る方がいなくなったり、転居によってお墓を管理できなくなったりした場合に、お墓を管理しやすい場所に移転する形で改葬されることが多いです。改葬の際には、以下のような流れで所定の手続きを行う必要があります。
- 移転先の墓地の管理者から「受入証明書」を発行してもらう
- 現在埋葬されている墓地の管理者から「埋葬証明書」を発行してもらう
- 墓地のある市区町村役所で改葬許可申請の手続きを行い、「改葬許可証」を発行してもらう
- 現在埋葬されている墓地の管理者に「改葬許可証」を提示し、遺骨を取り出したうえで墓石を撤去する
※その際、お墓から仏様の魂を抜いて元の石の状態に戻す「閉眼法要(魂抜き)」を行います。 - 移転先の墓地の管理者に「改葬許可証」を提示し、遺骨を埋葬する
※その際、墓石の「開眼法要」を行います。
お墓に関する「よくある質問」
お墓を建てる時期に決まりはありますか?
お墓を建てる時期に決まりはありませんが、四十九日から百カ日、遅くとも一周忌までに建墓することが多いです。
お墓に税金はかかりますか?
墓地の取得は「使用権」の取得であるため、不動産取得税や固定資産税等の税金はかかりません。また、相続の際に墓地や墓石は非課税財産となります。
永代使用料や管理費には消費税もかかりません。ただし墓石や外柵等の工事費用には消費税がかかります。
墓相について気にする必要はありますか?
墓相とは、お墓の形や材質、方角などで吉凶を占うものですが、本来、お墓にはどう建てるべきかという教えはありません。そのため、墓相については特に気にする必要はないと言えます。
遺骨の一部を他のお墓に移すことはできますか?
遺骨の一部を他のお墓に移すことを「分骨」と言います。分骨を行う際には、以下の方法で「分骨証明書」を入手する必要があります。
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お墓に埋葬されている遺骨を分骨する場合
寺院や霊園の管理者から「分骨証明書」を発行してもらい、分骨先の墓地の管理者に提出します。
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火葬の際に分骨する場合
火葬場から「分骨証明書」を発行してもらい、分骨先の墓地の管理者に提出します。
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納骨の際に分骨する場合
納骨予定の寺院や霊園の管理者から「分骨証明書」を発行してもらい、分骨先の墓地の管理者に提出します。
合祀とは何ですか?
「合祀」とは、家族に限らず複数の人を祀る施設のことをいいます。合祀墓には、教会の信者を祀る教会墓所や墓標代わりとなるシンボルの下に多数の人を祀る墓所などがあります。
檀家になるとはどういうことですか?
特定の寺院に所属し、葬祭や供養を寺院に任せるかわりに、お布施として経済的な支援を行うことを「檀家になる」と言います。檀家として所属しているお寺は、菩提寺(ぼだいじ)または檀那寺(だんなじ)と呼びます。
檀家になると、仏事のすべてをそのお寺にお願いすることとなり、また、お寺の年間行事への参加やお布施や護持会費を納める必要も生じてきます。
菩提寺になったお寺を変えることはできますか?
菩提寺になったお寺を変えることは、お寺同士のつながりがある関係上、難しくなっています。お布施などの問題で後々トラブルを起こさないためにも、お寺にお墓を建てる際は、安心してご供養をお任せできるか、お寺との信頼関係が築けるかどうか、お寺の住職とよく話をした上で判断するとよいでしょう。
戒名とは何ですか?
「戒名」とは本来、仏門に入った出家者が戒律を守る証として与えられる名前のことです。かつては、一般の人はなかなか戒名をいただくことはできませんでした。しかし現在では法要や儀式を受けるだけでも授けられるようになっており、「故人があの世で仏門に入り、仏様の弟子になった証」として名付けられることが多いです。
戒名は宗派によっては「法名」や「法号」と呼ばれます。浄土真宗では、宗祖の親鸞聖人が「何ひとつとして戒を守れない凡夫だから、弥陀の誓願によってのみ救われる」との教義を打ち立てたため、戒名がなく「法名」をいただくことになっています。日蓮宗では法華信者は霊山浄土に生まれるとされるため「法号」と呼ぶようです。
戒名や法名は必ず二文字で表されます。身分の高低に関わらず二文字であり、仏の世界は平等であることが示されています。また、お位牌に書かれた戒名は、院号・道号・位号などの全てが戒名と受け取られることが多いですが、戒名は本来二文字だけです。
院号・道号・位号にはどんなものがありますか?
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院号・院殿号
生前に一寺を建立するほど寺院に尽くしたり、社会的に高い貢献をした場合に与えられます。
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道号
戒名の上にもう一つ付けられる名前のことを道号と呼びます。中国で道号が生まれ、日本に伝わってから戒名の上に付けられるようになりました。
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位号
位号とは、戒名の下につけられている「居士」や「大姉」のことで、性別や年齢により違いがあります。位号の種類については以下の通りです。
- 成人男子…大居士・居士・大禅定門・禅定門・清信士(善士)・信士(清浄士)など
- 成人女子…清大姉・大姉・大禅定尼・禅定尼・清信女(善女)・信女(清浄女)など
- 男の子供(15歳くらいまで)…童子・大童子・禅童子など
- 女の子供(15歳くらいまで)…童女・大童女・禅童女など
- 男の子供(4、5歳以下)…幼児・嬰児・孩児など
- 女の子供(4、5歳以下)…幼女・嬰女・孩女など
戒名料の相場は?
戒名は寺院への貢献に対して与えられ、それに対してお布施でお返しするというのが本来の姿なので、決まった金額はありません。ただし実際にはお寺によって決められている側面もあり、一般的な相場としては「~信士」「~信女」で5~20万程度、「~居士」「~大姉」で15~30万程度、院号になると50万以上になるようです。
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寺院墓地.comとは
お墓は故人にとってやすらぎの場であり、遺族にとっても故人と対話できる大切な場です。寺院墓地には、数百年の歴史による落ち着きがあり、朝夕のご供養があり、檀家として寺院とつながることから生じる温かみのある絆があります。
人と人との関係が希薄になりつつある昨今、人間的なつながりを持つことのできる寺院墓地を選ぶということは、故人にとっても供養をする遺族にとっても、よい選択となり得るのではないでしょうか。
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