寺院墓地とは
墓地・霊園はその経営主体によって、公営墓地、民営霊園、寺院墓地の3つに大きく分けられます。そのうち寺院墓地とは経営主体が宗教法人である墓地のことを言い、法律的にも寺院の墓地経営は宗教活動の一環として捉えられています。
また、寺院墓地はその経営主体がそうであるだけでなく、墓地を使用する側にとっても宗教が大きく関わってきます。寺院墓地でお墓を建てるにはそのお寺の檀家になる必要があります。お寺の檀家になるということは、その寺院の宗派の信徒になるということです。そのため、寺院墓地でお墓を建てる場合、単に境内にお墓を設置しその管理をお願いするということだけでなく、寺院運営の構成者のひとりとしてお寺への支援や協力をするということが必要となってくるのです。
寺院墓地は、江戸時代にはじまる檀家制度のもとで普及・発展し、明治以降も墓地形式の主流を占めてきました。一般の霊園とは異なり、その宗旨・宗派が大きな意味を持つ寺院墓地ですが、最近では同じ仏教であれば特定区画に限り、宗旨・宗派を問わないとする寺院墓地も増えてきています。その要因として寺院墓地の多くが都市部の一等地にあり、その立地のよさから需要が高まってきていること。また、核家族化や少子化によって地域や親類との関係が希薄化し、家や宗派の重要性が薄れてきたことなどが挙げられるでしょう。
寺院墓地を選ぶ最大のメリットは寺院の境内に墓地があるということです。
住職や僧侶の位置が墓地と近いため、日々、読経供養をしてもらえるほか、管理面でも安心できます。法要もお寺の本堂で行われるため便利であり、法要や仏事に関してもいろいろと相談にのってもらえます。また、寺院の檀家になることで子供や孫など子孫の代までも手厚く祀ってもらうことができます。
かつてお寺は、人々の悩みや相談に乗り、住職の説法によって心の平静を与えるという、人々の信仰の中心であり、地域の中心のひとつでありました。しかし、隣近所における人間関係が希薄になっている現在、地域の中でのお寺の重要性は徐々に失われつつあります。
寺院墓地にお墓を建てるということは、檀家のひとりとして寺院と人間的な付き合いを持ち、地域の磁場としての寺院を支えていくということでもあるのです。また、供養される故人や先祖にとっても、そんな人間的な温かさの中で祀られることは、よいことであるに違いありません。