仏教の宗派解説 - 宗派で異なる墓石戒名彫刻
お墓の形は仏教の宗派によって変わるということはありません。宗派によって変わるのは、墓石に刻まれる文字です。現在、墓石に刻む文字として多いのが、「○○家の墓」「○○家先祖代々の墓」といった家名でこれは各宗派共通のものです。「南無阿弥陀仏」や「南無妙法蓮華経」などの名号や題目、戒名のつけ方については各宗派によって違うため、菩提寺と相談した上で決める必要があります。また、天台宗や真言宗、浄土宗などでは、戒名の上に梵字(サンスクリット語)を入れることがあります。
墓石(棹石)に刻む文字の場所については、棹石正面に家名・戒名(または俗名)、名号・題目、経文を刻み、棹石右側面に埋葬者の戒名、没年月日、享年を刻み、棹石左側面に建立年月日、建立者名を刻むのが一般的です。最近増えている洋型墓などでは、故人の好きな言葉や俳句・詩などを刻むことも多くなっています。
お墓の構成やお参りの仕方は各宗派によってそれほど違いはありませんが、浄土真宗についてはお墓参りのときに卒塔婆供養をしない、墓石に梵字を使わない、水子地蔵を建てない、などといった特徴があります。
天台宗の宗派解説
天台宗では、「妙法蓮華経(法華経)」こそが、仏陀(ブッダ)の教えの究極を説いたものであるとしています。天台宗は、この法華経を中心に、菩薩戒・顕教・密教・禅法などを融合した総合仏教といえます。これを「四宗相承(ししゅうそうじょう)」と言い、円・密・禅・戒、そして、念仏を法華経の精神で統合していこうというものです。そして、すべての人、生物、存在には仏になる可能性があると教えています。
開祖 |
宗祖 伝教大師 最澄(さいちょう) 高祖 天台大師 智顗(ちぎ) |
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総本山 | 「比叡山 延暦寺」(滋賀県大津市坂本本町) |
ご本尊 | 久遠実成無作の本仏、釈迦如来、阿弥陀如来、観世音菩薩など |
主な経典 | 「法華経」「大日経」「金剛経」「蘇悉地経」「梵網菩薩戒経」「仁王般若経」「阿弥陀経」「観無量寿経」「無量寿経」 |
お唱えする言葉 | 「南無宗祖本伝教大師福聚金剛(なむしゅうそこんぽんでんぎょうだいしふくじゅこんごう)」 ※「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」を唱えることも多い |
墓石の戒名彫刻 | 戒名について特別な決まりはありません。墓石には、戒名の上に大日如来を表す(ア)字か、阿弥陀如来を表す(キリーク)をつけることが多いようです。 |
真言宗の宗派解説
真言宗は真言密教とも言い、「即身成仏」を教えの根幹にしています。これは密教の修行の実践により、誰でもただちに仏になることができるという教えです。密教の修行とは、身体の修行である身密、言葉の修行である口密、心の修行である意密で、合わせて身口意の三密修行と呼ばれています。
開祖 |
宗祖 弘法大師 空海(くうかい) |
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総本山 | ここでは代表的な十派の本山をあげておきます。
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ご本尊 |
大日如来 |
主な経典 | 「大日経」「金剛頂経」「蘇悉地羯羅経」「瑜祇経」「要略念珠経」「般若理趣経」 |
お唱えする言葉 | 「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」 |
墓石の戒名彫刻 | 戒名の前に大日如来を表す「阿」字をつけ、墓石には(ア)をつけることがあります。 |
浄土宗の宗派解説
浄土宗では、極楽浄土に往生するためには阿弥陀如来の救いを信じて「南無阿弥陀仏」と唱えることが大切だと教えています。阿弥陀如来の救いを信じ、南無阿弥陀仏を唱えていると心も体も清らかになり、人生を豊かに生きぬき、死後浄土に生まれて仏になることができる。浄土に生まれればいつまでも浄土に居られるのですが、仏様としてこの世に帰ってきて、まだ救われない人々を救うこともできるというのが浄土宗の教えです。
開祖 |
宗祖 法然上人(ほうねんしょうにん) |
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総本山 | 華頂山 知恩院(京都市東山区林下町) |
ご本尊 |
阿弥陀如来 |
主な経典 | 「浄土三部経」(観無量寿経、無量寿経、阿弥陀経) |
お唱えする言葉 | 「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」 |
墓石の戒名彫刻 | 戒名には、浄土宗の真髄を相伝する「五重相伝」という法会を受けると、「誉(よ)」号と、男は「禅定門(ぜんじょうもん)」、女は「禅定尼(ぜんじょうに)」が戒名につけられます。墓石には戒名の上に阿弥陀如来を表す(キリーク)をつけたり、題目を彫ったりします。 |
浄土真宗本願寺派の宗派解説
浄土真宗では、「阿弥陀如来に帰依すると決めた時点で、誰でも仏になることが約束される」としています。阿弥陀如来に帰依した後の念仏は仏になるために唱えるのではなく、仏になれた感謝の表現として唱えるものです。自分の修行などによって極楽浄土へ往生しようとする「自力念仏」ではなく、阿弥陀如来を信じ感謝の心とともに唱える「他力念仏」が浄土真宗の念仏です。
開祖 |
宗祖 親鸞聖人(しんらんしょうにん) |
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総本山 | 西本願寺(京都市下京区堀川通花屋町下ル) |
ご本尊 |
阿弥陀如来 |
主な経典 | 「観無量寿経」「無量寿経」「阿弥陀経」「教行信証」 |
お唱えする言葉 | 「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」 |
墓石の戒名彫刻 | 教義上受戒がないので「戒名」とは言わず「法名」といいます。法名の前に男性は「釈」字を、女性は「釈(尼)」字をつけます。「釈」とは、「釈尊」の「釈」であり、お釈迦様の弟子であるという意味があります。院号・道号・位号はありません。墓石には、「南無阿弥陀仏」や「倶所一処」と彫ることが多いようです。 |
真宗大谷派の宗派解説
浄土真宗では、「阿弥陀如来に帰依すると決めた時点で、誰でも仏になることが約束される」としています。阿弥陀如来に帰依した後の念仏は仏になるために唱えるのではなく、仏になれた感謝の表現として唱えるものです。自分の修行などによって極楽浄土へ往生しようとする「自力念仏」ではなく、阿弥陀如来を信じ感謝の心とともに唱える「他力念仏」が浄土真宗の念仏です。
開祖 |
宗祖 親鸞聖人(しんらんしょうにん) |
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総本山 | 東本願寺・真宗本廟(京都市下京区烏丸通七条上ル) |
ご本尊 |
阿弥陀如来 |
主な経典 | 「観無量寿経」「無量寿経」「阿弥陀経」「教行信証」 |
お唱えする言葉 | 「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」 |
墓石の戒名彫刻 | 教義上受戒がないので「戒名」とは言わず「法名」といいます。法名の前に男性は「釈」字を、女性は「釈(尼)」字をつけます。「釈」とは、「釈尊」の「釈」であり、お釈迦様の弟子であるという意味があります。院号・道号・位号はありません。墓石には、「南無阿弥陀仏」や「倶所一処」と彫ることが多いようです。 |
臨済宗の宗派解説
臨済宗の教えは、人間が生まれながらに誰もがそなえている尊厳で純粋な人間性を自ら悟ることによって、仏と寸分も違わぬ人間の尊さを把握するところにあります。臨済宗は禅宗であるため坐禅を最も重視します。臨済宗の禅は「看話禅(かんなぜん)」と呼ばれ、師匠が「公案」という問題を出します。弟子はこれを頭だけで考えるのではなく、身体全体で理論を越えたところに答えを見出します。そして、この結果を検証するのが参禅です。師匠と二人きりで対面した弟子が見解を提示し、これを師匠が確かめるのです。
開祖 |
宗祖 臨済義玄(りんざいぎげん) |
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総本山 |
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ご本尊 |
釈迦牟尼仏 |
主な経典 | 「般若心経」「大悲呪」「観音経」「白隠禅師坐禅和讃」「宗門安心章」など |
お唱えする言葉 | 「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」 |
墓石の戒名彫刻 | 戒名には特別な決まりはありません。墓石には、上部に「円相」という丸い円が彫られることがあります。また、「南無釈迦牟尼仏」と書くこともあります。 |
曹洞宗の宗派解説
曹洞宗の修行の基本は坐禅であり、ただひたすらに坐禅を行うこと(只管打坐)を最も重要と考えます。そして、坐禅の心とすがたで日常生活を生きていく(即心是仏)ことを説きます。坐禅と日常生活はひとつ(禅戒一如)であるため、日常生活を大切にしてありのままに生きることこそが修行であり、この自己の修行がそのまま仏の行であると教えています。
開祖 |
高祖 承陽大師 道元禅師(どうげんぜんじ) 太祖 常済大師 瑩山禅師(けいざんぜんじ) |
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総本山 |
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ご本尊 |
釈迦牟尼仏 |
主な経典 | 「正法眼蔵」「修証義」「般若心経」「観音経」「法華経」「大悲心陀羅尼」「普勧坐禅義」「坐禅用心記」「伝光録」など |
お唱えする言葉 | 「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」 |
墓石の戒名彫刻 | 戒名には特別な決まりはありません。墓石には、上部に「円相」という丸い円が彫られることがあります。また、「南無釈迦牟尼仏」と書くこともあります。 |
日蓮宗の宗派解説
日蓮宗ではお釈迦様の説かれた教えの中でも法華経こそが、世の中を救う絶対最高の教えであるとします。その法華経を説かれた実際に歴史上に存在されたお釈迦様は、「久遠実成の本仏」が自身を表した姿です。久遠実成の本仏とは、永遠の昔に悟りを開いた仏さまという意味で、法華経も本仏が経典として実態を示したものです。
法華経は本仏の声そのものであり、法華経の功徳すべてが「南無妙法蓮華経」の七文字にこめられていると日蓮聖人は考えました。そこで「法華経の内容をすべて信じ帰依する」という意味の「南無妙法蓮華経」を唱えることを何よりも重要な修行としています。
開祖 |
宗祖 日蓮大聖人(にちれんだいしょうにん) |
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総本山 | 「身延山 久遠寺」(山梨県南巨摩郡身延町) |
ご本尊 |
大曼荼羅 |
主な経典 | 「妙法蓮華経(法華経)」 |
お唱えする言葉 | 「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」 |
墓石の戒名彫刻 | 「戒名」とは言わず「法号」といいます。男性の場合は「日」や「法」、女性の場合は「妙」を法号の一文字として用いることがあります。墓石には、ヒゲ文字と呼ばれる書体で「妙法蓮華経」の文字を書くことが多く、こうした文字をヒゲ題目と呼びます。法号などの上部には「妙法」の文字を入れる場合があります。 |
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